| 技法 | アクリル、キャンバス、パネル |
| サイン | 右下にサイン、年代 裏面にサイン、タイトル、年代 |
| 額 | 額装 |
| サイズ | 66.4×92.0 cm |
| 制作年 | 1970-71 |
| 鑑定書 | モトナガ資料研究室鑑定書付 |
元永定正(1922–2011)は、日本の戦後美術を代表する重要な芸術家の一人であり、吉原治良、白髮一雄、村上三郎らとともに、具体美術協会(Gutai)の初期中核メンバーとして活動した。身体性や素材性を強く打ち出した創作を展開した一部のメンバーとは異なり、元永定正は軽やかでユーモアに富み、遊戯的要素を含んだ視覚言語によって制作を行い、抽象表現と大衆的な視覚経験とのあいだに独自の関係性を築いた。
1970年代は、元永定正の芸術言語が次第に成熟していく重要な時期であり、この頃の作品には絵本制作と呼応するような視覚的特徴が見られるようになる。本作《の》はまさにこの時期に制作された作品であり、鮮やかで躍動感のある色彩と簡潔な線によって画面の主要な構成が形作られている。リズミカルな図形は抽象と具象のあいだに微妙な緊張関係を生み出し、作家特有のユーモアと想像力を端的に示している。
その後、元永定正はアクリル絵具によるエアブラシ技法を取り入れ、柔らかな背景の上に高彩度の色彩と明確な輪郭をもつ幾何学的形態を重ねることで、明るく純度の高い色彩と、カートゥーン的ともいえる視覚的特徴を発展させていった。こうした試みは、作家独自の表現言語をさらに豊かなものへと展開させていくこととなった。