| 技法 | 合成樹脂、エナメル塗料、キャンバス |
| サイン | 裏面にサイン、年代 |
| 額 | 額装 |
| サイズ | 87.0×72.0 cm |
| 制作年 | 1971 |
田中敦子は、日本戦後美術における前衛芸術の精神を体現する存在であり、日本の戦後美術を国際的舞台へと押し上げた重要な作家である。とりわけ「具体派(Gutai)」においては、白髪一雄、嶋本昭三、吉原治良らと並ぶ中核的メンバーとして位置づけられ、国際的な美術潮流とも比肩しうる存在として評価されてきた。こうして彼女は、アジア戦後美術史における確固たる地位を築いている。
本出品作《1971A》は、そうした成熟期の様式を端的に示す代表作である。身体性を基盤としつつ、反復される円環状の幾何学的モティーフを重ね、円と線とが交錯する複雑な網状構造を構築している。その画面は、あたかもエネルギーが直接キャンバスへと注ぎ込まれるかのような強い緊張感を孕む。生体内部を循環する情報やエネルギーの回路を想起させるイメージは、物質同士の相互関係や、生命を駆動する電気的ネットワークを思わせるものである。
画面上部中央に配された大きな緑の円は、周囲の多様な色彩を巧みに調和させる要として機能し、無数の線が円の外側へと流動することで、画面全体に躍動的な対比をもたらしている。そこには理性的で精神的な思索と、前進しようとする強い欲求とが交錯し、同時に感性的な温度が与えられている。
画面に脈打つこのエネルギーは、生命と物質のリズムが織りなす独自の「振動する空間」を創出する。物質の本質、心理的連関、精神活動についての多層的な思考は、一見錯綜する構図のなかに巧みに編み込まれ、深い象徴性を帯びたイメージへと昇華されている。男性中心であった20世紀日本美術界において、田中敦子は独自の光を放ち、国際的評価を獲得した。その卓越性と歴史的意義は、今日においても揺るがない。