香港春季オークション 2026

LOT 236

白髪 一雄

瑞相変

HKD 7,500,000 - 12,500,000
USD 957,900 - 1,596,400
JPY 153,061,200 - 255,102,000
技法 油彩、キャンバス
サイン 裏面にサイン、タイトル、年代
額装
サイズ 130.0×160.0 cm
制作年 1986
鑑定書 日本洋画商協同組合鑑定登録証書付

HIGHLIGHT

白髪一雄は、戦後日本の前衛芸術団体「具体美術協会(具体派)」を代表する重要な作家の一人である。具体派は1954年に日本で結成され、吉原治良によって創設された。物質と身体を出発点とする芸術を掲げ、創造性と個の自由な表現を重視し、戦後社会における硬直した制度や戦時下の服従的価値観への応答を試みた。具体派の芸術家にとって、芸術は単なる形式的探求にとどまらず、鑑賞者を既成概念や社会的規範から解き放つ実践でもあった。白髪一雄の制作は、まさに具体派の身体性と物質性の徹底的な追求を体現している。彼は伝統的な筆による絵画制作を放棄し、両足を創作の道具とした。天井から吊るしたロープを両手で握り、身体を宙に浮かせながら、床に置いたキャンバスの上で両足を旋回させ、絵具を引き延ばし、塗り広げることで、画面に爆発的な動勢と強烈な物質感を生み出した。
《瑞相変》(1986年制作)は、作家の成熟期を代表する重要な作品である。1970年代以降、白髪一雄は次第に仏教思想を自身の創作理念に取り入れるようになり、作品の題名にも仏教的語彙が多く見られる。「瑞相」は仏教において祥瑞の徴(きざ)しを意味し、神聖な力や重要な瞬間の顕現を象徴する語である。さらに「瑞相変」とは、その吉祥なる徴がある場において実際に現れ、視覚化された具体的な情景へと転化すること、すなわち奇跡的な光景として顕在化する状態を指す。両者が併置されることで、作品タイトル自体が「徴の顕現と変容」という意味を内包し、無形の内的感覚や精神的エネルギーが、色彩や形態、肌理といった触知可能な造形へと結実する過程を示唆しているかのようである。
画面に躍動する痕跡は、芸術家の身体運動が直接刻み込まれたものである。奔放で疾走するような筆致と、沈潜するような重厚な動きが交錯し、独特のリズムを形成する。その流動性は、東洋書道の草書に通じる運筆の感覚をほのかに想起させる。厚く堆積した油彩は彫刻的な質量感を帯び、赤の絵具は奔流する生命力のごとく画面にうねり、黄色は光の気配を添え、黒は深い基調として画面を支え、白がその間に緊張感を与える。作品全体は内側から発光するかのような精神的強度を宿し、白髪一雄が身体行為と内的意志、そして物質としての絵具を統合した独自の創作方法を雄弁に物語っている。

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